ブラック・スワンという本を読まなかった。
プロローグちょっと読んだだけだが、いくらなんでも頭悪過ぎて……。
まず、黒い白鳥が見つかるまでの白鳥に関する事実だけど、
- 白鳥の羽は白いという証拠が大体そろっている。
という考えがそもそも間違えで、
- 現在のところ白以外の羽をもつ白鳥が存在する証拠はない。
がせいぜいだろう。基本的な科学のやり口を理解していない人間にありがちな間違えである。
この時点でもう非科学的すぎてやめたくなったが、もう少しだけ読んだ。突っ込み所は指数関数的に増えていったが、読むのをやめた部分だけ突っ込む。
二〇〇一年九月一一日のテロ攻撃を考えてみればいい。九月一〇日の段階で、ああいうことが起こる可能性がそれなりに想定できていたなら、そもそもああいう事件は起こらなかった。そういう可能性にも気をつけた方がいいということになれば、戦闘機が世界貿易センターの上をぐるぐる回っていただろうし、旅客機のほうも防弾ドアをつけて鍵をかけていただろう。テロ攻撃は起こらなかった、マル。
(傍点は除いたというかHTMLでは書けないので)
- 日時や場所を相当なところまで絞り込めているのを「それなり」という不自然さ。
- そこまで絞り込んでおいてやってることが戦闘機旋回という微妙さ。
は置いといて。
まあここまで予測できていれば確かになんとかなると思う。戦闘機を旋回させるだけじゃ被害はまだ大きくなるだろうけど、空港のガードも厳しくするなりすればかなり減らせただろう。
問題はそもそもそんな精度の高い予測なんてできないことにある。予測自体はできる。大規模テロの可能性をアメリカが認識していなかったとは考えられない。
東日本大震災だって、可能性というレベルでは起こり得ることはわかっていた。
今後確実に起こるだろう、破局噴火や巨大隕石の衝突、核によるさらに大きなテロや致命的かつ感染力の高いウィルスの蔓延、それらをきっと防げないのは、起こらないと考えられているからではない。
- 起こる確率が低いため、短期的に見るとリスクが小さく、
- あるいは/また、精度の高い予測ができなかったり、単純な難しさから、対策に大きなコストがかかり、
- そのコストを回収できるかが難しいため、コストが支払えない。
からである。
人間には大きな変動は見えない、のも確かだろうが、問題の本質はそこではない。科学的に考えれば黒い白鳥の存在はなんの問題もなかったし、大規模テロの可能性は、見えなかった人もいるだろうが、そのせいで対応できなかったわけではない。
精度の高い予測ができないことが問題の本質で、それは人間個々人の性質とはあまり関係ない。
プロローグのほんの一部でやめたのでこの批評は的を外しているかもしれないが、この本を読み続ける価値がないのはそれなりに予測できたので読み続ける気はない。